ザ・フィクション

ザ・ノンフィクション6月19日「都会を捨てた若者たち 前編 ~27歳の迷い道~」のその後。「ザ・フィクション」

その後ダイチはキノカの父からログハウスの作り方を学ぶことになった。
作るのはキノカの夢であったカフェ、「タイボク」の店舗である。カフェの名前はダイキとキノカの名前から字をとってきて、さらにキノカの父の職業にもかけてある。
ダイチはキノカの父とログハウスのカフェを作っていくうちに、自分の父を重ねていく。建築系の現場仕事をしている姿がそっくりなのだ。
ログハウスを作るうえでのキノカの父の教えは全てメモをとるダイチ。
キノカもカフェの準備を着々と進める、その姿は鬼気迫るものがあった。
そしてダイチはようやくきづく。
一匹狼を気取ってきた自分がどれだけ回り道をしてしまい、一方自分自身にいつも素直にまっすぐ生きてきたキノカがどれだけ人生を深く味わえているかを。
「ログハウスのカフェも完成まじかだ。」
キノカの父親がダイチに笑顔をみせた。最近は体調がよくキノカも安心していた。
ログハウスの組み立てで筋肉隆々となったダイチは日に焼けた真っ黒の顔の中から真っ白な歯をみせてほほえんだ。
「おとうさん、ダイチ、やっとコーヒーが決まったから飲んでみて。つまむものもあるし」キノカが遠くから叫んでいる。
「キノカがまず飲めばいいだろう」父親がいたずらっぽく言い返した。
「今わたし飲めないのー」
ダイチの顔が少し赤くなったが日に焼けているせいで父親には気づかれなかった。